マンションの買い時・売り時を見極めたくても、「マンション価格の変動理由がわからず不安」「今後の価格がわからないと計画を立てられない」と悩む人も多いのではないでしょうか。
そのため、さまざまな視点で価格推移を分析し、検討することが大切です。
この記事では、全国のマンション価格の推移だけでなく、地域別・物件の築年数別の価格推移も解説します。価格変動の理由となる情報や、今後の価格予想・買い時・売り時も紹介するので、購入・売却したいマンションがある人はぜひ参考にしてください。
- 2022年までのマンションの価格推移
- 地域別・築年数別のマンションの価格推移
- マンションの価格変動の原因
- 2022 年現在はマンションの買い時・売り時なのか
Contents
2022年までのマンション価格推移
2019年はバブル期並みの水準
バブル崩壊から2012年までマンション価格は下落・低調が続いていましたが、2013年にアベノミクス・金利政策・オリンピック開催決定への期待感から上昇、2019年にはバブル期並みの水準に戻りました。
しかし、価格高騰の理由は景気の回復によるものだけではありません。2019年にバブル期並みの水準に至った背景には、建築現場の人手不足・資材費などの建築費が高騰したことも要因として挙げられます。東京オリンピックの施設・インフラ整備のために人手と資材が多く必要とされたためです。
また、都市部のマンションは大手ディベロッパーが手掛けた富裕層向けのブランドマンションが中心になっており、平均価格を上げる要因にもなっています。
2020年はコロナパンデミックの影響で一時的に下落
2020年の4~6月はマンション価格が下落しました。同年1月に日本国内で初めて新型コロナ感染者が確認され、3月に緊急事態宣言がなされたことが影響しています。
しかし、2020年を通してみるとマンション価格は上昇しており、下落は一時的なものでした。
また、新築マンションの供給はコロナ禍の感染対策に加え昨年に引き続く人手不足で減少していましたが、築浅の中古マンションのニーズが高まりを見せたことも2020年の特徴です。
2021年も価格高騰の勢いは続く
2021年も引き続きマンションの価格は上昇を続けます。次のグラフは国土交通省が算出した不動産価格指数です。
引用元:国土交通省「令和4年3月31日プレスリリース」
2010年の住宅総合平均を100とした場合、マンションの価格指数は2021年で173.4に達しています。戸建ての価格指数が108.6とほぼ横ばいであることと比較すると、大幅な上昇率と言えるでしょう。
2022年は新築7,000万円台まで上昇
不動産経済研究所の「首都圏新築分譲マンション市場動向(2022年2月)(2022年3月)」によると、2022年2月のマンション1戸あたり平均価格は7,118万円、3月は6,518万円でした。わずか1カ月で大きな価格差が出ていますが、前年同月比では3カ月連続で上昇しています。
また、東日本不動産流通機構の「月例速報 Market Watch サマリーレポート2022 年 2月度 」では、首都圏・札幌市・仙台市における中古マンションの平均価格が前年同月比で6.6%上昇していることが示されています。
このことから、全国的に見ても新築・中古マンションともに価格が上昇傾向にあることがわかります。
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マンションの地域別の価格推移
なお、西日本エリアは2013~2020年のデータを参照しています。
首都圏の場合
対象エリア:東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県
年 | 平米単価(万円)(前年比%) | 価格(万円)(前年比%) | 専有面積(平米)(前年比%) |
2010 | 39.51(+4.0) | 2,581(+3.2) | 65.32 (-0.7) |
2011 | 38.66(-2.1) | 2,516 (-2.5) | 65.07(-0.4) |
2012 | 38.40 (-0.7) | 2,515(0.0) | 65.51(+0.7) |
2013 | 40.58 (+5.7) | 2,614(+3.9) | 64.42(-1.7) |
2014 | 43.41(+7.0) | 2,789(+6.7) | 64.25 (-0.3) |
2015 | 45.94(+5.8) | 2,932(+5.1) | 63.81(-0.7) |
2016 | 48.43(+5.4) | 3,078(+5.0) | 63.54(-0.4) |
2017 | 50.63 (+4.5) | 3,253(+5.7) | 64.24(+1.1) |
2018 | 52.00(+2.7) | 3,354(+3.1) | 64.51 (+0.4) |
2019 | 53.95(+3.8) | 3,478(+3.7) | 64.46(-0.1) |
2020 | 56.14(+4.1) | 3,668(+5.5) | 65.33 (+1.3) |
引用元:東日本不動産流通機構「表1-① 中古マンションの基本指標[首都圏]」
先述の通り、景気回復への期待や建築費の高騰などの影響で、2013年以降は1戸あたりの価格・平米単価ともに上昇がみられます。10年間で1,000万円以上の値上がりが見られたのは首都圏のみです。
また、首都圏ならではの特徴として、価格が高いわりに専有面積は小さいことも挙げられます。そのため、平米単価もほかのエリアと比べると2倍近く高い金額が示されています。
近畿の場合
対象エリア:大阪府・京都府・兵庫県・滋賀県・奈良県・和歌山県
年 | 平米単価(万円)(前年比%) | 価格(万円)(前年比%) | 専有面積(平米)(前年比%) |
2010 | 24.09(+1.3) | 1,683(+0.8) | 69.86(-0.5) |
2011 | 24.20(+0.5) | 1,691(+0.5) | 69.84(0.0) |
2012 | 24.25 (+0.2) | 1,677 (-0.8) | 69.15(-1.0) |
2013 | 25.35 (+4.6) | 1,769(+5.5) | 69.79 (+0.9) |
2014 | 26.29(+3.7) | 1,841(+4.1) | 70.05 (+0.4) |
2015 | 27.84(+5.9) | 1,929(+4.8) | 69.29(-1.1) |
2016 | 29.38(+5.5) | 2,030(+5.2) | 69.09(-0.3) |
2017 | 30.63(+4.2) | 2,101(+3.5) | 68.60 (-0.7) |
2018 | 32.49(+6.1) | 2,233(+6.3) | 68.73(+0.2) |
2019 | 33.59(+3.4) | 2,313(+3.6) | 68.86 (0.2) |
2020 | 33.96(+1.1) | 2,366(+2.3) | 69.67(+1.2) |
引用元:近畿圏不動産流通機構「表1-① 中古マンションの基本指標[近畿圏]」
近畿圏は首都圏に次いで価格の高いエリアですが、首都圏と比較すると価格が1.55倍、平米単価は1.65倍の差があります。価格と平米単価の差が異なるのは、近畿圏の方が首都圏よりも平均専有面積が広いためです。
また、10年間の価格差は約680万円で首都圏ほどの価格上昇はみられません。
ただし、エリアをこまかく見ていくと、大阪市では価格が大幅に上昇していることがわかりました。2010年の平均価格は1,872万円でしたが、2020年では3,015万円と1,140万円以上の値上がりです。つまり、都市部と地方の価格差が大きいことがわかります。
中部の場合
対象エリア:富山県・石川県・福井県・岐阜県・静岡県・愛知県・三重県
年 | 平米単価(万円)(前年比%) | 価格(万円)(前年比%) | 専有面積(平米)(前年比%) |
2010 | 20.32(+2.2) | 1,498(+1.7) | 73.72(-0.4) |
2011 | 19.97(-1.7) | 1,477(-1.4) | 73.94(+0.3) |
2012 | 19.54(-2.1) | 1,435(-2.8) | 73.42(-0.7) |
2013 | 20.63(+5.5) | 1,536(+7.1) | 74.49(+1.4) |
2014 | 21.30(+3.3) | 1,575(+2.5) | 73.95(-0.7) |
2015 | 22.43(+5.3) | 1,658(+5.2) | 73.91(-0.1) |
2016 | 23.19(+3.4) | 1,712(+3.3) | 73.83(-0.1) |
2017 | 24.72(+6.6) | 1,825(+6.6) | 73.83(0.0) |
2018 | 25.55(+3.3) | 1,873(+2.7) | 73.33(-0.7) |
2019 | 26.85(+5.1) | 1,994(+6.5) | 74.28(+1.3) |
2020 | 27.24(+1.5) | 2,022(+1.4) | 74.20(-0.1) |
引用元:中部圏不動産流通機構「表1-① 中古マンションの基本指標[中部圏]」
中部エリアも上昇傾向ですが、価格・平米単価ともに10年間の上昇率は首都圏・近畿圏ほど大きくありません。
一方、詳細なエリアでは石川県で2015年に価格が急騰し28.3%増、平米単価では30.1%増になっています。2015年は北陸新幹線が東京―金沢間を開通した年です。
このように、エリア平均で見ると上昇幅が大きくない場合でも、特定の地域で目立ったトピックがあれば価格が急上昇する可能性があることがわかります。
西日本の場合
対象エリア:中国・四国・九州地方
年 | 平米単価(万円)(前年比%) | 価格(万円)(前年比%) | 専有面積(平米)(前年比%) |
2013 | 20.13 (―) | 1,362(―) | 67.69 (―) |
2014 | 21.27 (+5.7) | 1,438 (+5.6) | 67.60(-0.1) |
2015 | 22.40 (+5.3) | 1,505(+4.7) | 67.19(-0.6) |
2016 | 24.15 (+7.8) | 1,670(+10.9) | 69.14 (+2.9) |
2017 | 25.65 (+6.2) | 1,755(+5.1) | 68.41(-1.1) |
2018 | 26.71(+4.1) | 1,845(+5.1) | 69.06(+1.0) |
2019 | 27.09(+1.4) | 1,869(+1.3) | 68.99 (-0.1) |
2020 | 27.50 (+1.5) | 1,905(+1.9 ) | 69.27 (+0.4) |
引用元:西日本不動産流通機構「表1-① 中古マンションの基本指標[西日本]」
西日本全体で見ると、2016年に急騰していますが10年を通したときの上昇率はそれほど大きくはありません。
2016年に急騰した理由として考えられるトピックを、広島県と福岡県を例に解説します。
広島県
2016年、広島市の基準地価が3大都市圏を上回る上昇率を見せました。地価向上に関するトピックとして次のようなものが挙げられます。
- 2015年に大規模複合開発「広島ボールパークタウン」の開発が進行
- 2015年3月、JR西日本新白島駅が開業
不動産の価格変動の要因については後述しますが、大規模開発・新駅開業によるアクセス向上は、地価を上昇させる要因です。地価が上がればマンション価格も上がります。また、新たな人気エリアの出現でマンションのニーズが高まったため、供給も増加しました。
福岡県
福岡県の住宅地における基準地価は、2016年の発表時点で4年連続上昇していました。主要なトピックには次のようなものが挙げられます。
- 2015年に大規模再開発「天神ビッグバン」が本格始動
- 2016年4月、JRJP博多ビルとKITTE博多が開業し博多駅周辺が活性化
「天神ビッグバン」は建物制限等の規制緩和も含めておこなわれる、福岡市主導の大規模再開発です。2024年までの10年間で30棟のビルを建て替え、年間8,500億円の経済波及効果を目指しています。
商業ビルがメインの再開発ではありますが、新たな雇用・娯楽を生み出しました。これによって、天神へのアクセスが良好な街が「福岡県住みたい街ランキング」で上位にランクインしています。
このように、新な拠点が生まれたり既存の拠点が活性化したりすると、周辺のニーズも高まりマンション価格も上がる傾向にあります。
マンションの築年数別の価格推移
ここでは、首都圏の2021年の不動産流通市場のデータをもとに築0~5年・築16~20年・築31年以上の中古マンションの価格推移を紹介します。また後半では、マンションの法定耐用年数47年(鉄筋コンクリート造)を超えた築50年以上の中古マンションについても解説します。
項目 | 築0~5年 | 築16~20年 | 築31年以上 |
成約率 | 30.5% | 34.9% | 16.4% |
成約価格 | 6,136万円 | 4,685万円 | 2,040万円 |
成約物件の面積 | 64.84平米 | 72.80平米 | 57.28平米 |
成約平米単価 | 94.63万円 | 64.35万円 | 35.61万円 |
新規登録価格 | 6,239万円 | 5,067万円 | 2,358万円 |
新規登録物件の面積 | 55.40平米 | 65.85平米 | 50.02平米 |
新規登録平米単価 | 112.61万円 | 76.95万円 | 47.15万円 |
引用元:公益財団法人 東日本不動産流通機構「年数から見た首都圏の不動産流通市場(2021年)」
築5年までの場合
首都圏での築5年までの中古マンションの平均成約価格は 6,136万円で、新築マンションと比較しても大幅に安くなっているわけではありません。基本的に、築年数が経過するほどに市場価格は下がっていくため、築浅物件の価格が高いのは当然と言えます。
しかし、注目すべきは成約率です。価格が高いため中古マンションを買うお得感が低く、築16~20年のマンションと比べると成約率が低い結果が出ています。
最も需要があるのは築6~10年のマンションです。新築と比べると価格が安く、なおかつ築浅ということで人気があり、成約率は40.7%に達しています。
築16年〜20年の場合
マンションの法定耐用年数は47年ですが、水回りをはじめとした住設機器の耐用年数が迫っている時期です。しかし、耐用年数を過ぎた機器が大半でなければ、大規模リフォームをすることなく、現状のまま取引されることが多い傾向にあります。
築浅物件と比較すれば価格は下がりますが、キレイな状態で使用していれば住設機器の経年劣化が価格に与えるインパクトは少なめです。成約率も34.9%と高く、まだまだ需要のある築年数と言えます。
築31年以上の場合
築31年を超えると、成約価格は築0~5年と比べて3分の1程度まで下落します。住設機器の大半が法定耐用年数を超過しているため、大規模リフォームを前提に購入する必要があるからです。
また、マンション自体の法定耐用年数は47年なので、建物の修繕費負担が大きくなることも成約率大幅低下の要因といえるでしょう。管理組合で取り決める修繕費積立金の額が大きかったり、直近で大規模工事の予定があったりすると購入希望者が現れづらくなります。
築50年以上の場合
築50年以上の中古マンションの価格帯は幅広く、数百万~3,000万円台です。
日本初の民間マンションが1956年竣工なので、最も古いマンションでも築66年以下ということになりますが、築50年を超えてそのままの状態で残っているマンションはそう多くありません。
築50年以上で現存するマンションのほとんどは、建物自体の大規模修繕をおこなっています。耐用年数が回復することも多く、大規模修繕によって新たな価値が生まれることで、3,000万円台で成約するケースがあります。
マンション価格の今後の動きを予想
ここからは、マンションの今後の価格を、需要と供給の観点から予想していきます。
今後も需要は伸び続ける
少なくとも、これから短期間で需要が低下する予兆は見られません。景気全体が低下したコロナ禍であってもマンション需要の落ち込みはほとんどなく、富裕層をターゲットにしたブランドマンションは発展を続けています。
背景として少子高齢化・核家族化が進んでいることが大きく、老後も住みやすいアクセス良好な立地のマンションの需要は高まっていくと考えられるでしょう。
また、持ち家信仰の衰退によって賃貸マンションに住む人が増えてきています。つまり、購入したマンションを賃貸化すれば収益を得られる可能性も高いということです。将来的な投資を見越した購入も増えてくるでしょう。
中古マンションは価格下落の予想
中古マンションは都市部と地方で価格の広がりが大きくなっていく可能性があります。都市部であれば先述のような需要がありますが、アクセスが不便なエリアでは人口減によって需要が低下し価格も下がるでしょう。
また、居住者で修繕費を出し合う必要があるため、空室が目立つ中古マンションでは高額な修繕費積立金がネックとなり、ますます空室が増加することも考えられます。
ただし、都市部の物件であっても下がる可能性はあります。その理由は、住居に求める条件が変化しつつあるからです。コロナ禍で促進されたリモートワークによって家で過ごす時間が増えた結果、次のような物件の需要が高まりを見せています。
- 収納スペースが多い
- 日当たりがよい
- 防音性が高い
- 仕事専用スペースを確保できる間取り
- 通信環境のよい家
都市部の中古マンションのなかでも、このようなニーズに応えられない物件は価格低下を余儀なくされるでしょう。
価格が下落する前にマンション売却を検討するなら、まずはマンション査定が得意な不動産一括査定サイトで査定依頼してみましょう。
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相続税対策での需要が見込める
不動産にかかる相続税は、不動産の市場価格よりも低い金額となる相続税評価額をもとに算出されるため、現金で相続するよりも節税につながるというメリットがあります。
また、先述のように都市部のマンションであれば賃貸需要があるため、相続する側に持ち家があったとしても投資用物件として所有しやすいこともメリットです。
子孫への相続税対策として現金を不動産に換える動きが増えれば、ますますマンション需要は高まっていくでしょう。
マンション価格が値上がり・値下がりする理由
この章では、マンションの価格推移の背景を取り上げ、値上がり・値下がり両面の要因を考えていきます。
マンション価格が値上がりする4つの要因
まずは値上がりする要因から見ていきましょう。
公示地価の上昇
マンション価格には土地の価格も含まれるため、国土交通省が発表する土地価格「公示地価」が値上がりすると、マンション価格も値上がりします。公示地価は1月1日時点での土地の標準的な価格を記載するもので、国土交通省が毎年3月に発表しています。
各不動産会社や金融機関などは、この公示地価をもとに土地の価格や担保評価などを決定しています。公示地価が上がる理由としては、観光客の増加に伴う商業施設の建設や都市開発などの要因でその土地の需要が高まることが挙げられます。首都圏は特に公示地価の高いエリアです。
建築費の高騰
建築費が高くなれば、その分マンションの販売価格に上乗せされるためマンション価格は高くなります。近年だと建築費が高騰する理由は、少子高齢化と東京オリンピックが挙げられます。
少子高齢化が進むことで住宅需要が低下し、建築業に携わる人材が不足することで、建築費高騰が続いてきました。
金融緩和政策による低金利
2013年の金融緩和政策による、住宅ローンの金利低下もマンション価格高騰の間接的な理由です。住宅ローンの金利が下がれば融資を受けやすくなるため、住宅ローンを組んで家を購入しようとする層が増えます。マンションの需要が増えることにより、マンション価格も高騰する仕組みです。
特に、今までマンションを購入したくても住宅ローンの審査に落ちてしまった人にとっては、マンション価格は高くなるものの家を購入しやすくなるので、大きなチャンスといえます。
富裕層向け高級マンションの増加
高級マンションの建築・販売が増えた結果、マンションの平均価格が値上がりしています。これにはかつてのリーマンショックが影響しています。リーマンショックで経済が混乱した結果、中小のデベロッパー(※マンションの建設・分譲などを担当する会社)は撤退し大手のデベロッパーが残りました。デベロッパーは少しでも利益を得るべく、利益率の高い高級マンションに力を入れます。
一方購入者も、居住用ではなく投資用としてマンションを購入する層が増え、不況に強い、景観やアクセスのよさなど付加価値のついた高級マンションを求めるようになりました。結果として、高級マンションの需要が売り手・買い手ともに増加しました。販売戸数は減りましたが、一戸あたりの平均価格は値上がりしています。
マンション価格が値下がりする4つの要因
土地が売りに出される「2022年問題」
2022年問題とは、「生産緑地」にかけられていた売買・用途の制限が2022年に解除されることで、土地の供給量が増加し、地価の暴落を招くのではないかと懸念されている問題です。
生産緑地は市街地や今後市街地になる予定のエリアにある、農林漁業の用途に向くと判断された土地です。生産緑地に指定されると、30年間は農林漁業以外の利用・売買が認められません。一方、固定資産税や相続税で優遇を受けられるというメリットがあります。
生産緑地の8割が1992年に指定されており、2022年に30年間の期限を迎えます。指定が解除されると税制優遇を受けられなくなるため売却が加速し、供給が増えることから地価が下落するのではないかと言われています。
ただし、10年間の延長が可能な「特定生産緑地制度」があるため、2022年を契機に地価が急激に暴落する可能性は低く、下落スピードは極めてゆるやかなものといえるでしょう。
人口減少による需要減
人口が減少すると買い手が少なくなるため、需要が減り価格が下がります。総務省の国勢調査データによれば、2008年以降少子高齢化が進み、国内全体の人口減少に歯止めがかからない状態となっています。2030年には人口が約860万人減ると予想されています。
ただし、人口が減少すると建築業が人材不足となるため、人件費の高騰につながります。人口減少は価格の上昇・下落両方に影響する要素です。
デフレや増税
デフレや増税によって、購入者が減少するとマンション価格も値下がりします。日本は現在ゆるやかなデフレの状態にあり、2019年10月には消費税も8%から10%に引き上げられました。
直接的なマンション価格に関しては、住宅ローン控除期間の延長やすまい給付金など国の政策によって、増税の影響が少なくなるよう配慮されています。しかし、デフレや増税があると単純に所得が減り家に回せるお金が少なくなるため、マンション購入者は少なくなり価格は下がりやすくなります。
金融引き締め
2022年4月時点では低金利が続いていますが、今後金融引き締めがあれば住宅ローンの金利が上がります。住宅ローンが利用しにくくなれば家の購入に躊躇する人も増えるでしょう。消費者の買い控えを避けるため、物件価格の値下げが始まる可能性があります。
なお、金融引き締めは金融緩和の逆の金融政策で、インフレ抑制のためにおこなわれるものです。市場に出回る通貨の量が減り金利が上がるため、住宅ローンの金利も上がります。
資産価値が落ちにくいマンションとは
この章では、市場の価格変動に踊らされない、資産価値の高いマンションの特徴を紹介します。マンション購入を考える際は次の3点を物件選びの判断材料にしてみてください。
利便性が高い人気エリアに建っている
利便性の高いエリアは資産価値が残りやすいので、居住・投資どちらの用途でも適しています。たとえば、駅から徒歩5分圏内にあるマンションや、複数路線が乗り入れて通勤・通学に便利な駅が近くにあるマンションはいつでも高い需要があります。数十年が経過した後も、こうした駅近の強みは変わりにくいのが魅力です。
なかには再開発によってさらに利便性が上がり、購入時より価格が高くなるケースもあります。
ブランドマンションである
ブランドマンションは人気が高く、資産価値が落ちにくいです。ブランドマンションとは、「メジャーセブン(※)」と呼ばれる大手不動産会社の手がけるマンションのなかでも特に品質にこだわって建築されたマンションのことです。
たとえば三菱地所レジデンスであれば「パークハウス」、大京であれば「ライオンズ」などがあります。CMや新聞広告などでマンション名だけは知っているという人も多いでしょう。
こうしたブランドマンションは全国展開されているため購入しやすく、各不動産会社の代表的なマンション物件であるため管理やフォローも行き届いているのが魅力的です。あらゆる面でこだわり抜かれて作られているため、常に高い人気があり中古でも高額で取引されます。
注1)
メジャーセブン…住友不動産、東急不動産、野村不動産、三菱地所レジデンス、三井不動産レジデンシャル、東京建物、大京の7社が共同運営する新築マンション検索サイトのこと。
周囲の眺望や環境がよい
オーシャンビューや富士山を一望できるなど眺望に特徴のあるマンションは、比較的いつでも需要が高く、中古でも価格が落ちにくいです。
また、ファミリー向けのマンションの場合、周囲にスーパーや学校、病院など普段の暮らしに欠かせない施設がどれくらいあるのかも資産価値に大きく影響します。たとえ駅から遠い、都市部でないなどデメリットのある土地であっても、こうした施設の周囲にあるマンションは資産価値が落ちにくく、将来引越すときも高い価格で手放すことができるでしょう。
マンションの売り時&買い時は今なのか
最後に、マンションの売り時・買い時が今なのか将来なのかを予想します。
マンション購入:今が買い時
マンション価格の増減には地域差があるものの、平気的に見れば上昇傾向なので、欲しいと思える物件の価格が低下することは考えにくいのが現状です。
とくに、首都圏のマンション価格は新築・中古ともに価格上昇が激しいため、待っていても安くなることは期待できません。「今が最安値」と考えて、欲しい物件があれば購入に向けて動くことをおすすめします。
ただし、投資目的で地方の安価な物件を購入するのは避けるのが無難です。コロナ禍で人気の物件条件やエリアに変化はみられるものの、再開発予定のない地方エリアの人気が急騰する可能性は低いからです。
自家用であれば今が買い時、投資用であればエリアの特性を熟考した上で判断しましょう。
マンション売却:早めの行動がおすすめ
マンションの平均価格は上昇していますが、それは新築物件の価格が高いからです。市場価格は築年数が経過するほどに安くなるため、売却するなら早く動きましょう。売却時期を早めて損をすることがあるとすれば、売却後に当該物件のエリアの再開発が発表されて地価が高騰するといったレアケースです。
また、現在は低金利政策かつ住宅ローン控除対象の築年数が大幅に延長されるなど、住宅ローン利用者にとって追い風の状況が続いています。しかし、政策に変化があれば住宅ローンを利用できる人が減り、よほど好条件の物件でなければ売りに出しても売れない状況に陥るかもしれません。
マンション売却をスムーズに進めるための手順など詳しく解説したこちらの記事もおすすめです。
まとめ
本記事では、マンション価格の推移を、全国・地域別・築年数別で解説しました。
地域差はあるものの、首都圏をはじめ都市部のエリアでは上昇幅が大きく、全国平均は上昇傾向にあることがわかりました。景気上昇だけでなく建築費の増額も要因ではありますが、需要は一定数あるため、今後なにか大きな事件や政策の転換がない限り、大きな下落はないと考えられます。
つまり、購入・売却どちらにしても今がチャンスです。機を逃すことなく動けるよう、物件・周辺の情報収集や銀行への相談、マンションの査定依頼といった準備を進めていきましょう。
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