「会社を辞めたいと考えているけれど退職方法がわからない」「退職することを伝えても辞められそうにない」と悩んでいませんか。
トラブルなく円満に会社を辞めるためには、適切な手順や伝え方を知っておく必要があります。
この記事では会社を辞めたいと思っている人向けに、具体的な手続きや伝え方、トラブルの対処法などを解説します。
ぜひ参考にしていただき、円満に退職を実現させ、新しい一歩を踏み出してください。
会社を辞める基本の手続き
会社を辞めるときは、以下の手順で進めるのが一般的です。
- 上司に会社を辞めると伝える
- 仕事の引き継ぎ
- 備品は返却し必要書類を受け取り辞める
- すぐに転職しないなら保険・税金の手続きをおこなう
それぞれのステップを詳しく解説します。
1:上司に会社を辞めると伝える
会社を辞める際は「直属の上司」に退職したいことを伝え、退職届を提出することが一般的です。
直属の上司ではなく、さらに上の立場の人や人事に退職したい旨を伝えてしまうと、上司のマネジメント不足を疑われてしまい、円満退職できない可能性があるため注意しましょう。
退職の意思を伝えるタイミングは、期間に定めのない労働契約を結んでいる場合であれば、退職する日の2週間前までに伝えれば問題ありません。
しかし就業規則で「退職の〇ヵ月前までに伝える」と定められている場合もあるため、事前に確認しておく必要があります。
退職届は会社を辞めることを認められ、退職する日程が決定したら提出するようにしましょう。
2:仕事の引き継ぎ
退職手続きと同時に、自身の担当していた仕事の引き継ぎをおこないます。
後任者が決定している場合は、スケジュールを押さえて余裕を持って引き継ぎをしましょう。取引先へ挨拶するなら、後任者を連れて行き紹介しておくとより親切です。
後任者が決まっていない場合は、引き継ぎの資料やメモを残しておいてください。できるだけ詳細に資料やメモに残すことで、後任者の負担が減り円満に退職しやすくなります。
3:備品は返却し必要書類を受け取り辞める
仕事の引き継ぎを終えたら、会社に備品を返却します。備品を返却しなければ後にトラブルになる可能性があるため、必ず返すようにしましょう。主な備品は以下のとおりです。
- 名刺
- 身分証明書
- 健康保険証
- スマホ・パソコン
- 資料・データ
- 筆記用具・ファイル など
有給休暇の消化中に健康保険証を使いたい場合は、後日郵送でも問題ありません。こうした備品を返却した後、以下のような書類を受け取ります。
- 離職票
- 雇用保険被保険者証
- 年金手帳
- 源泉徴収票
会社によって、返却する備品や退職後に受け取る書類は異なります。スムーズに退職するためにも、何を返して何を受け取るのかを事前に確認しておくことが大切です。
4:すぐに転職しないなら保険・税金の手続きをおこなう
会社を辞めてすぐに転職しない場合は、自身で保険や税金などの手続きをおこなう必要があります。なかでも優先しておこなうべき手続きは、失業保険と国民健康保険です。
失業保険は離職票を持参し、ハローワークにて手続きをおこないます。国民健康保険の場合は、退職した翌日から14日以内に各市区町村役所で手続きしましょう。
厚生年金から国民年金への切替は、退職日の翌日から14日以内に、住所地の市区役所または町村役場で手続きが必要です。また。住民税の支払いが必要な場合も自宅に納付書が届きます。離職中に手当が支給される失業保険と、保険給付のある国民健康保険は忘れずに手続きしましょう。
※参考:
国民年金に加入するための手続き|日本年金機構
会社を退職した時に、国民健康保険に加入するためにどのような手続が必要ですか。|金沢市
会社を辞める意思を伝えるときの2つのポイント
スムーズな退職や円満退職を実現させるためには、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 退職予定日までに余裕をもつ
- 引き止められても意思を変えない
「会社をなかなか辞められない」「会社とトラブルになった」などと困らないように、ぜひ参考にしてください。
退職予定日までに余裕をもつ
会社を辞める際は、退職予定日の1〜3ヵ月前に伝えることが一般的です。余裕をもったスケジュールにすることで、仕事の引き継ぎを無理なくおこなえるだけでなく、会社側が後任の育成や採用をしやすくなります。
また円満退職を目指すなら、繁忙期に退職するのはできるだけ避けたほうがよいでしょう。
引き止められても意思を変えない
熟慮のうえで「会社を辞める」と決意したなら、引き止められても意思を変えないようにしましょう。
優柔不断な態度を取ると交渉が可能だと思われてしまい、退職までの期間が長引くことになります。
引き止めのリスクを減らすためには、先んじて転職活動を進めて内定を獲得し「◯日が初出社なので、△日までに退職したい」と明確に伝えることが望ましいです。
損をせずに会社を辞める4つの方法
会社を辞める際には、以下のようなポイントを押さえておくと、損をせずに退職しやすくなります。
- 退職日までに有給休暇を消化
- ボーナスの支給日まで辞めるのは待つ
- 未払いの残業代は請求
- 退職金の条件を満たす
それぞれを詳しくみていきましょう。
退職日までに有給休暇を消化
会社を辞める前に、残っている有給休暇を消化できないか検討しましょう。有給休暇を申請した場合は、法律上、会社は取得することを拒否できません。なお有給休暇は、以下のように勤続年数によって付与日数が異なります。
- 半年:10日
- 1年半年:11日
- 2年半年:12日
- 3年半年:14日
- 4年半年:16日
- 5年半年:18日
- 6年半年:20日
まずは自分が付与されている日数を確認しましょう。ただし、仕事の引き継ぎが終わっていないのに有給休暇に入ると、後任に迷惑がかかってしまいます。引き継ぎも加味して、有給休暇を消化できるスケジュールを立てるのがおすすめです。
会社によっては、消化しきれない有給休暇の買取をしてくれるところもあるので、就業規則をチェックしてみましょう。
参考:年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています|厚生労働省
ボーナスの支給日まで辞めるのは待つ
退職日をボーナス支給日のあとに設定することで、ボーナスを受け取って退職できる可能性が高まります。
ボーナスには夏と冬の2つの種類があり、それぞれの支給日を事前に確認して、退職のスケジュールを組むようにしましょう。なおボーナス査定期間中に退職の意思を伝えてしまうと、査定に影響が出て減額する可能性があるため注意が必要です。
未払いの残業代は請求
残業代の支払いがなかった場合は退職するときに請求できます。2年以上前の残業代は請求できませんが、2年分までさかのぼって未払い分を受け取れます。
未払いの残業代を請求する際は、自分でおこなうだけではなく弁護士に依頼することも可能です。弁護士に頼むことで、未払い分を取り返せる可能性が高まるでしょう。
確実に残業代を取り返すためには、より多くの証拠を集めることが重要です。手書きの記録でも証拠になる可能性もあるため、請求する際は集めておきましょう。
※参考:残業代の未払い請求は退職後でも可能!退職後に請求する際のポイント|労働問題弁護士ナビ
退職金の条件を満たす
退職金をもらいたい場合は、事前に条件を確認して辞めるタイミングを検討しましょう。
退職金が支給される主な条件は勤続年数です。30代であってももらえる可能性はありますが、勤続年数が短い場合は退職金を支給していない企業も多くみられます。
また退職金の規定は、法律上で定められているわけではありません。そのため受け取れるかどうかは、就業規則を確認する必要があります。
会社を辞められないときの対処法
会社を辞めたいと伝えても引き止められてしまい、なかなか退職できないケースがあります。会社を辞められないときは、以下の方法で対処しましょう。
- 直属の上司以外に会社を辞める相談
- 専門の機関に相談
- 退職代行に依頼
直属の上司以外に会社を辞める相談
直属の上司から強く引き止められて退職できそうにない場合は、人事部、もしくは他部署の立場が上の人に相談しましょう。人事部や別の上司に相談することでアドバイスをくれたり、直属の上司に対して交渉してもらえたりする可能性があります。
上司からのハラスメントや嫌がらせによって、辞めることを伝えられない場合も同様に、人事部や別の上司に相談することがおすすめです。ひとりで悩みを抱え込まずに周囲の人の力を借りましょう。
専門の機関に相談
会社を辞められないときの対処法として、専門機関に相談するやり方もあります。社内の人に頼れないときは、外部機関への相談が有効です。主な相談先とそれぞれの対応は、以下のとおりです。
専門機関 | 対応してくれる内容 |
労働基準監督署 | 会社への指導 |
労働局 | 会社への指導と、専門家の仲介により会社と話し合う場を提供 |
労働局は労働基準監督署の上部機関であり、会社と労働者が和解する場を設けてくれます。また、対面だけではなく電話での相談も受け付けているので、退職できずに困ったときは利用することをおすすめします。
退職代行に依頼
「パワハラやいじめを受けており出社が難しい」「何度も退職の意志を伝えているのに応じてくれない」という場合は、退職代行サービスの利用を検討しましょう。
退職代行は、労働者の代わりに業者や弁護士が退職手続きをおこなってくれるサービスです。
退職代行を利用することで確実に退職が実現できます。また上司と顔を合わせることなく辞められるため、関係性が悪い場合においても利用したいサービスです。
ただし、退職代行を利用すると数万円の費用がかかり、かつ円満な退職が難しくなります。また、なかには対応があまり良くない業者も存在するため、入念に業者を選ばなければ、スムーズに退職できない可能性があるので注意が必要です。
退職代行の依頼先の選び方
退職代行を選ぶ際は、種類や料金をチェックすることが大切です。退職代行の種類と費用相場は以下のとおりです。
種類 | 特徴 | 費用相場 |
一般業者 | 退職意思の伝言 | 2万円~ |
労働組合 | 退職意思の伝言や退職に関する交渉 | 2~3万円 |
弁護士 | 退職意思の伝言や退職に関する交渉、法的対応 | 5万円以上 |
弁護士に依頼すれば退職に関するすべてを代行できますが、依頼費用は高い傾向にあります。一般業者の場合は、費用が安いもののサービス内容が充実していません。
また、どの種類を選んでも実績を確認することが重要です。判断するポイントとして、これまでにサポートしてきた人数が多くサポート歴が長ければ、信用できる退職代行といえる可能性が高いでしょう。
会社を辞めるときのよくある疑問
最後に、会社を辞めるときによくある質問をまとめました。
- 電話で会社を辞める意思を伝えてもよい?
- 辞める前に転職活動をしたほうがよい?
- 入社してすぐに辞めると転職で不利?
疑問を解決してから退職のプランを立てましょう。
電話で会社を辞める意思を伝えてもよい?
体調不良や精神的につらい状態など、やむをえない事情がある場合は、出社することなく電話で伝えても問題ありません。ただし無断欠勤扱いにされないように、辞める意思はハッキリと伝えるようにしましょう。
また、本来は直接会って伝えることが社会人としての基本なので、事情を説明して電話での報告をお詫びすることも大切です。
辞める前に転職活動をしたほうがよい?
資金面に余裕がない場合は、会社を辞める前に転職活動を進めたほうが無難です。退職後に転職活動を始める形だと、以下のようなリスクがあります。
- 会社を辞めても生活費はかかり続け、貯金が減る
- 自己都合退社の場合、失業保険をすぐにもらえない
- 貯金が減ることで焦ってしまい、妥協して転職先を決めてしまう
できるだけ早めに会社を辞めることを伝えて、気持ちに余裕を持って転職活動を進めましょう。
入社してすぐに辞めると転職で不利?
入社したばかりの会社を辞めても、必ずしも転職活動で不利になるわけではありません。以下のような理由や状況であれば、早期退職の影響は少ないでしょう。
- 事前に聞いていた業務と違っていた
- ハラスメントが横行していた
- サービス残業が多い
- 病気や家庭の事情
やむを得ない理由があれば、採用する側も納得してくれる可能性があります。ただし、短期間で何度も会社を辞めている場合は、マイナス評価になることが多いため注意が必要です。
まとめ
スムーズに会社を辞めるためには、基本的な流れと手続きについて理解しておく必要があります。退職予定日までに余裕をもち、退職理由をポジティブな内容に変換することで、会社ともめることなく辞められる可能性が高まるでしょう。
どうしても会社を辞められない場合は、専門機関や退職代行に相談するのがおすすめです。労働基準監督署や労働局のような専門機関に相談すれば、会社に対して指導をおこなってくれます。退職代行を利用すると、上司と顔を合わせずに退職することが可能です。
辞めたいと思いながらズルズルと働いていると、仕事を楽しめずにスキルアップも期待できません。自分の将来を考え、何がベストか考えたうえで行動に移していきましょう。